ソーホーを歩いている。
この界隈の建物は、もとは移民たちの安い労働力を使った小さな工場や倉庫だったものだ。19世紀後半のものである。カースト・アイアンと呼ばれる建物だ。
カースト・アイアンは、鋳型のこと。イギリスから伝えられた建築技術で、溶解した鉄を鋳型に流し込み、建物の骨格や外観を構成する鉄の枠組を整形する。この鋳型を基本の形とし、建物を造る。こうすることで、従来の石造りの建築に比べ大分安価にでき、しかも鉄なので、風雨、火災にも強い。
20世紀になり、大恐慌になるとこの街から工場は出ていってしまった。空家は増え、街は一時荒廃していく。
そこへ集まってきたのがアーティストたちだった。
工場の作業場にあてられていたロフトは、天井が高く、フロアが広い。アトリエにはもってこいだった。ソーホーは、たちまち芸術家の街になった。
カースト・アイアンの建物を見て歩く。ギャラリーを訪ね歩く。散歩が楽しくなる街だ。
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